Photo essay Inside/Outside~音のない音楽

8)ポリリズム

ベッドに横たわる妊婦のおなかにマイクをあてると、

スピーカーからは、ふたつの心臓の音が聴こえてきた。


胎児の心音と、母親の心音が重なり合って、生命のポリリズムを刻んでいる。

とても早くて、小さくて、愛しい胎児の心音。
思った以上にゆったりとした、ノイズのような母の心音。


マイクが拾ったふたつの心音が、

スピーカーから外に放たれ、
ふたたび耳の穴から、
母親の体内に入っていく不思議。


体の内側のポリリズム。
生命の音楽。

 

2015.10.10(C)Yuko Sasama/ササマユウコ


7)青い月/鬼灯

 

そろそろ口に含むとき。
透けた満月、熟した鬼灯。

ひとつの声が重なって、吠えるはきれいな青い月。

思い思いに鬼灯含んで 25000が練り歩く。
今日は青い月だから、平和を願ってまた明日。


鬼灯苦いの 当たり前。
平和を願ってまた明日。


2015.07.31 (C)2015 Machida@TOkyoYuko Sasama/ササマユウコ)

 

6)黄色い記憶

確かにこの目で見たのである。

 

大きな黄色いインコたち。


しかし夢ではなかったと、

 

誰が信じてくれるだろうか。


今日も黄色い記憶を信じて、

 

コトバに替えて伝えてみる。

 

信じているのは自分なのか、

 

コトバになった黄色いインコか。

 

次々に生まれるコトバの端から、

黄色い砂が零れ落ち、

いつしか記憶の残像が、

曖昧な影になっていく。

 

いやでも確かにこの目で見たのである。

 

黄色い大きなインコたちを。

 

信じられないかもしれないけれど、信じたくないのかもしれないけれど。

 

 (2013 Akasaka@TOKYO 

    Yuko SASAMA/ササマユウコ)

5)慈雨の森


森の中でアマオトをきく。


茂みに降る雨粒は少なく、

森の中心には

小さな静寂があった。

 

周囲はざあざあと雨の音。

けれども、ここに傘はいらない。


この季節の緑は深く美しく、

森は優しく大きな力に包まれる。


世界の真ん中に耳をすます。

平和であれと、アマオトに願う。

静寂に感謝する。

 

恵みとは、この雨のこと。

祈りとは、この森のこと。

 



2015.6.19 forest@tokyo

(C)Yuko Sasama

4)思惟

 

 

 

 

 

正解なんて存在しない、たぶん。

 

 

 

 

 

 







2015.6.1

Aoyama@tokyo

(C)Yuko Sasama/ササマユウコ

3)花の名前


 

境界線に小さな花が咲いている。

 

名前は知らない。

偉い人がつけた名前はいらない。
「本当の名前」は、

きっと花だけが知っている。

 

境界線に小さな花が咲いている。

私の足元で、たくましく。


名前は知らない。

花も教えてくれない。

けれど、本当に咲いている。

 

小さな花が咲いている。

 

2015.5.18 machida,Tokyo
(C)ササマユウコ/Yuko Sasama


 

2)聴覚と視覚/足音と石畳/オトと音楽

みる音楽、きく音楽。

石のリズム、歩くリズム。

靴の音、石の声。

世界にひとつのオンガクをきこう。

目と耳で。

 

(2015.5.2 aoyama,komaba (C)ササマユウコ/Yuko Sasama)

1)記憶と時間の関係性。

もはや過去なのか未来なのかもわからない。
記憶よりもずっと古びた風景が目の前にあって、

それは考えればまったく自然のことだけど、

歪んだ時空に入り込んでしまったような不思議な感覚に陥った。


モノの集合体である街は、時間とともに古くなる。

勝手に再生などしない。

「常に進化する東京」という擬人化された幻想は、

今も人々に儚い夢を与えながら、

街のところどころに忘れ物を残しながら、

時計の針を容赦なく前に進めていく。


アーチに抗う薔薇よ。

その花と棘は時間を包み、過去と未来をつなぐのか。

自然の生命力は正直だ。

記憶はいつも嘘をつく。

 

                 (2015.4.19 ura-harajuku (C)ササマユウコ/Yuko Sasama)